iPhone 3Gのビジネスモデルの転換についての考察


というわけで、発表されたiPhone 3G
とりあえず特筆すべき事は、3G対応、GPS、そして大幅に低い初期費用という所ですね。
まあ、その辺は他の所で散々書かれてるので、
ここでは、新しいiPhoneのビジネスモデルがかなりうまく出来てると思うので、
について考察してみます。

以前までは、

Apple: iPhoneを本来より少し安く売る。その代わりキャリアから通信料金の一部をもらう。後者が利益の源泉。
キャリア: 端末価格に関してはほぼノーリスク。その代わり通信料を一部Appleに献上。ただしユーザー数が増えるのでシェアと利益の向上には貢献。

だったと思います。
ただし、おそらくこの一年程でAppleに次の問題が。

1: iPhoneに対する競争が予想よりも激しくなってきた。シェアを早めに上げる必要性にAppleが迫られた。
2:利益の源泉に想定していたキャリアからの通信料が、Pwnageをはじめとするhack toolの登場により怪しくなってきた。


そこで次のような案になったのでは、ないでしょうか?

Apple: 端末価格の補填はキャリアからもらう。その代わりキャリアからの通信料は諦める。
キャリア:AppleiPhoneの補填のための料金を支払う。その代わり通信料は全部自分の物。

その転換により次のようなメリットがApple, キャリア、ユーザーにもたらされます。

Apple: より早くて確実なキャッシュの回収。hack toolによる減収のリスクは全部キャリアに渡された。
そしてなにより、初期費用の低下+販売国の増加による大幅なユーザーベースの増加による
mobile computing platformのdefacto standardの座を得る可能性を高められる。
大きな利益は、それを得た後に考えれば良い。

キャリア:hackによるリスクはあるものの、長期的に以前より大きな利益が通信料から得られる。
iPhoneブランド抱える事により、Smartphone志向のユーザーを大量に引き寄せる事が出来、
その分野でのインフラを整える為の重要な起爆剤となる。
また、iPhoneの為だけのプランを作らなくてもいいので、以前よりは導入コストも下がるはず。

ユーザー:2年間の契約期間で考えると以前よりもわずか(アメリカでは約$40)に多く費用はかかるものの、
よりよいサービス(3G+GPS)を大幅に低い初期費用で受ける事ができる。


というように、3者にとって、Win-Win-Winなモデルになってます。
市場の動向を見て、うまい落としどころを考えて、それをキャリアに納得させる手腕はさすがにJobsでしょうか。
とりあえず、彼が本当に欲しいのはmobile computing市場を制する事と、そこから得られる利益なんでしょう。

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その他の雑感。


1) Hackはできるのか?
技術的にはおそらくすぐ(遅くても一ヶ月以内)にされるでしょう。
ただし、Appleとキャリアもバカではないので、ある程度の対策は考えてきたようです。法的な制約という形で。
新しい販売方針により、Retail Apple Storeやキャリアの販売店で購入する場合は、
その場で少なくとも契約をしてからではないと、店から出られない様になっています。
オンラインでの販売もその内行われるかもしれませんが、
その場合もおそらくオンライン上で契約しなければ購入できない形にするか、
それとも高額(おそらく$500-600くらい?)で購入した後に、
契約&アクティベート後にcash-backを行うという形になるのではないかと思います。
ただし、今回はAppleにはhackによる直接のリスクはほとんどないので、
もしかしたらオンラインで最初の内は$199で売ってくれる可能性もありますが、
その内、キャリアからの要請で止める事になるでしょう。(でなければ、キャリアは大損ですからね。)
ということで、さすがに$199のみでiPhoneを入手するのは、困難だと思われますが、
もう少し多く払えるなら抜け道は出てくるかもしれないと予測します。


2) iPhoneの次期モデルは?
今回は、かなりの予想されてた変更がされていませんでした。挙げると。


容量の増加(32/64GB)
カメラの向上
Bluetooth A2DP
802.11nの搭載
小型化


おそらく年明け頃にこれらの一部あるいは全部を入れた、
次期iPhoneが出るのではないかと思われます。
3Gはキャリアと連携しないといけなかったので、多くの時間がかかりましたが、
上記の物は比較的容易にできるので、出るのにまた一年はかからないと予測します。
とりあえず、WWDCで発表された70ヶ国全部でiPhone 3Gが発売されてから
2~3ヶ月くらいは立たないときびしいかもしれませんが。
ただし、新ラインアップとしてiPhone nanoを$149で出すとか言うのなら、
もう少し早まるかもしれませんが。


3) Movieはどこへ行った?
今回の基調講演で、JobsがAppleの現在の3本柱はMac, Music, iPhoneだ、と言っていたのを受けて、
Movieはどこへ行った?と思わず言ってしまいました。
デペロッパ向けの基調講演だったので、強調しなかっただけなのかもしれませんが(そうだと願いたい)。
しかし、最近はさらに競争(NetflixのRokuやらPS3のHD配信やら)でオンラインVOD市場の競争も激しくなってきた上、
Appleに圧倒的な優位性は無いので、もしかしたら撤退してしまうのかもしれませんねえ。


PS
はてながメンテナンスしてる間にimpressに以下のような記事が。
さすがはプロ。かゆい所に手が届くような詳細が・・・。
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/40348.html
日本語手書き入力がまだサポートされてないって言うのは、痛いなあ・・・。
これでかなり買う気が無くなった・・・。(買うとしたらPDAとして使いたかったので)。


iPod touchは容量、バッテリ、サイズ&重量等で差別化するしか無いだろうなあ・・・。
総所有コストは圧倒的に低い訳だし。
GPSがつけば、キラーなんだけどそれではiPhone 3Gが売れなくなるので、ないかな。
後は、Bluetooth A2DPをtouchにだけ付けるとか(w 
それだったら、iPhoneユーザーから相当なブーイング来そうだな。