Kenwood KEGHD60シリーズ発売と改良点についての考察


http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070914/kenw1_02.jpg


Kenwoodの「新」モデルが発売されました。
主な変更点は


1) HDDが30GB -> 60GB
2) AACファイル(non-DRM)の再生に対応(Apple Loselessには非対応)
3) 内部の改良によりさらなる音質改善
4) WAV, KLS再生時のバッテリ寿命がそれぞれ14/15時間に向上(?) (非可逆に対しては同じ20時間)


あたりでしょうか。

サイズ:61x17x104mm
重量:140g
液晶:2.2" QVGA
色:ブラック/ホワイト
などのスペックは全モデルと同一の様です。
価格は57800円。(5万円超えると、やはり高く見えますね・・・)


無難なマイナーアップグレードでいい方向には進んでるんですが、
これだけで生き残れるのでしょうか・・・。
とりあえず、Kenwoodの更に採るべき戦略を考えてみました。


まず、Kenwoodの絶対的な強みは「DAP中、圧倒的に最高な音質」。
そこだけは他社に追随を許してはいないようです。
それが決定的な要素になりそうな顧客層は


1) とにかく最高の音質を追求する人
購買率は高いが、絶対数は少なめ。
2) クラシック等、音質に敏感なジャンルをよく聞く人
購買率は中、絶対数は1)よりは少し多め。
3) その他の一般ユーザーでiPodの音質に少し不満を持っている人
数はものすごく多いが、購買率はかなり低い。


基本的に、3)の層への競争は激しく、かなり改善が必要になるため、
1)を死守し、2)の支持を少しずつ増やすような改善をしながら
3)にもアピールするようなポイントを貯めて行くのが最善だと思われる。


次に取るべき戦略。
A) 最高音質の維持。ただiPod等も音質を少しずつ上げてきているので、
 ある程度の水準を超えられると、これだけでは少しキツい事になる。
 大きな違いを感じられる程の差を常に保つ必要があり、これは結構キツい。
 しかし、ここで負けると存在意義そのものがなくなるので、ここは絶対に死守。
 ここは全ての層にアピールする。
B) 1) と 2)の層は非圧縮もしくは可逆圧縮で聞いてる人が多数のはず。
 それらのフォーマットに有用な機能のアップグレードを優先する。
  最重要なのは、音質以外ではHDD容量とバッテリ寿命。
 今回はここを少し補強したので、いい方向。
 しかし、iPodがそれを上回るスピードで良くなったので、インパクトが弱い。
 HDD容量は規模の問題上、まずiPodには勝てないので、
 バッテリ寿命をロスレス/WAV再生時にiPod classic 160GB以上、(せめて24時間)になることに全力を注ぐ。
 それで、1)からの流出は多少鈍らせられるはず。
 iPodを超えられれば、2)からの需要も呼び込める。
C)Loselessを使いやすくする (ソフト面)
B)の路線の派生だが、ソフト面からの戦略は
まずオープンな可逆圧縮フォーマット(FLAC)等を採用する。(できればApple Loselessも)
専用転送ソフトを撤廃し、D&Dで管理できる様にする。(その代わり、WMA-DRMは捨てねばならないかもしれないが。)
HDD容量ではiPodには勝負できないので、ロスレスを使いやすくするのは絶対に必要。


以上は必須項目。
以下は、上記を犠牲にしないようにしながらできるだけ満たしたい部分。
D)本体の外観、サイズ
まず、このデザインはそろそろなんとかしないとヤバい。とても日本製品には見えない。
金はかかるが、音質への影響は少ないだろうから、絶対にやるべき。
まず、ボタンの枠線は外す。音量バーは撤廃。
とにかく高級感を出さないと音質だけでiPodとの価格差を顧客に納得させるのは難しい。
次にサイズ。これは音質との兼ね合いもあるので、簡単には減らせないだろうが、
現時点の大きさは、余りにも前時代的。
E) 価格
これはセグメントの問題上、あまり下げる事もできないが、
iPod nanoの$200前後の価格帯で8GBのフラッシュメモリプレイヤ等、
loseless+Kenwoodの体験を比較的安価にできるオプションを作って、
上の製品を買わせるようにするなどは必要かもしれない。
とりあえずGC7シリーズの容量拡大とバッテリ増大からか?


うーん、いろいろ挙げてみましたが、
並べてみると誰でも思いつきそうな月並みな発想ですね・・・。


これだけじゃなんなので、3)のユーザーを崩す方法をもう少し考えてみます。


iPod+iTunesの囲い込み戦略をどう打破するかという点にしぼってみます。
この囲い込み要素を考えてみると
1) iTunesでつけた大量のタグ等の特殊メタ情報。(コメント欄やマイレート等)
2) Apple LoselessやAACなどのフォーマット
3) iTunes Storeで購入したDRM付きのAAC
4) iTunes UIへの慣れ
5) iPod UIへの慣れ


などでしょうか。
2) の再エンコードの手間も結構問題なんですが、これは時間をかければ同じ物を復元できます。
しかし、1)を引き継ぐのは並大抵ではありません。
そこで、iPodを打破するためには、まずiTunes特有のID3タグを読んで活用できるようにする必要があります。
これにライセンス料が必要なのかはよくわかりませんが、必要無いなら是非取り入れなくてはだめでしょう。
Apple LoselessとDRM-AACは諦める代わりに、
4)への対策として、なんとかしてFLAC用のQuicktime Plug-inを用意する必要があるでしょう。
そして、FLACを直接iTunesで管理できる様にする事によって、
同じファイルをiTunesDAPの両方からから利用できる様にして、4)の問題点を緩和する。
ただし、プレイリスト/スマートプレイリストはかなり難しそうなので、
KEG用のプレイリストをiTunesプレイリストから作成するツール等が必要になるでしょう。
5) に関しては、かなりの対策がとれそうです。
なぜならiPodのUIは(touchにおいても)、まだまだ改善の余地があるので、
それ以上の物を作ることができれば、5)の問題は解決です。(簡単ではないでしょうが)。
目的の曲/プレイリスト/演奏方法へ、出来る限り簡単な操作でたどり着ける事、
ポケット内の操作も簡単にできるようにする事、等でしょうか。


しかし、やはり最終的には価格、デザイン、サイズ/重量になりますかね・・・。
全部では勝てないので、音質でのアドバンテージを多少価格に上乗せして、
デザイン、サイズ/重量でどこまでiPod nano等に迫れるかということですね。
sansa viewやZenなどもあるので、かなりキツそうですが、
圧倒的な音質の差をこのサイズで見せつける事ができれば、
活路が生まれるかもしれません。


とりあえずここまでということに・・・。
本当にKenwoodのflash8-16GB/FLAC再生24時間/D&D可/50g前後/2.5-3万が年末までに
出る事を渇望してるんですが、なんとかなりませんかね。
8GB/3万でも結構売れると思いますが。