本当に原子力発電は、石油を節約できるのか?


前々から疑問に感じていたのですが、本当に原子力発電は、
石油を使った火力発電よりも、石油を節約することが出来るのでしょうか?

しかし、その事を考察するためのデータがWeb上ではなかなか見つからない。
英語論文を含めて、文献調査をすれば、見つかるのかもしれないが、
そこまでいている余裕も無いので、とりあえず二次情報から考察してみます。
(この時点で、この考察の価値が無くなりそうだが・・・。)


まずは、
http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/qa_a14.htm


発電効率の導出式がはっきり定義されてないのが、問題ですが、
ここは、好意的にざっくりと見て、
全プロセスの運用エネルギーと、発電時の設備エネルギーを合わせた
投入エネルギーに対しての、総生成エネルギーの割合と解釈します。
(発電時のみの運用エネルギーに対する物と考えると、
明らかにエネルギー収支がマイナスになってしまいますので、
さすがにそれはないだろうと言う事で、この定義でいきます。)


(しかし、濃縮プロセスが全投入のエネルギーの85.0%というのは、
やはり特筆に値します。CO2の排出量が石油火力発電等より
圧倒的に少ないという説は、これでほぼ破綻します。
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data5007.html
ここ等で示されている、1kwhあたり22gのCO2というのは、
この濃縮プロセス時等に必要なエネルギーを
生成する時に発するCO2を含んでいませんから、
ざっくり考えて少なめに見積もっても、22 x 25 = 550gで、
ここに電力として投じられるエネルギーの
火力発電の割合と、それぞれの発電効率等のファクターをかけると
石油火力とそれほど変わらないか、多いということになりそうです。)


話が少しずれましたが、このデータを元にして計算すると
”耐用年数を30年として1kWhの電力を生産するのに必要な投入エネルギーを求めると、
原子力発電の場合は約0.03kWh、石油火力では0.025kWhとなります。
発電プラントごとに比較すると、
   LNG火力>原子力>石炭火力>石油火力>中小水力
の順で投入エネルギーが大きくなっています。”
となるようです。
そして、ここには、核廃棄物の処理・保管に必要なエネルギーは含まれていません。


このデータを見れば、明らかに原子力発電の石油火力発電に対する
エネルギー収支パフォーマンス(およびCO2排出量)の優位性はかなり怪しくなり、
逆に劣っていてる可能性の方が高くなる可能性の方が高く感じる程です。
他の方も、独自のデータで考察されていますが、
http://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/200612150000/
どう好意的に解釈しても、15%程の石油節約にしかならないようです。
廃棄物処理原発事故のリスクやデメリットを考えると、
火力発電に比べて、積極的に利用する必要性はあまり見られません。


では、なぜ原発を進めるかというと
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3208558.html
等にあるように、
1) 経済コスト効率がよい。
2) 公務員の天下り先の確保
(エネルギー供給の分散に関しては、
上記の理由から少し疑問ですので、省きます。)
の他にも、「核兵器をその気になれば、いつでも持つ事ができる。」
という日本特有の事情(憲法9条)による安全保障上の理由によるものだと思われます。


(少し、脱線で上記への反論を。)
2)の理由の妥当性は、論外としても、
1)の経済コスト効率がよいというのも、よりエネルギーがかかる事を考えると、
本当か疑わしく感じますが、とりあえず本当という事にしておきましょう。
安全保障上の理由は、核抑止力を持つためには、
すぐに使える状態にしないと意味がありませんし、
逆に敵国(特に北朝鮮)に格好の攻撃目標を与える事になるので、
あまり意味が無いどころか、逆効果になるような気もしますが・・・。


というわけで、化石燃料の枯渇の時間稼ぎをするためには、
原子力活用というのは、ほとんど有効なオプションではないようです。
反論や、もっと詳しい資料をご存知の方は、是非お知らせを。


(ここからは余談になります。)


本当の時間稼ぎのためには、
石油、天然ガス、石炭をバランスよく使う事、
それぞれの発電効率をさらに高める事、
地熱、太陽光、風力、バイオマスetcの総発電量を上げる事、
エネルギー消費そのものを下げる(節約レベルでは無く、産業・経済構造レベルで)事、
等を地道に積み上げて行くしか無いのでしょう。
(ちなみに各資源の埋蔵量と世界分布)
http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/world/sw_index_03/index.html


そして、稼いだ100~200年程の間に、核融合かそれに準ずるような
画期的なエネルギー生産法を生み出すしか、
人類が生き延びる方法は無いのでは無いかと思います。


まあ、とりあえず我々の世代の目標は、
確実な100年程の時間稼ぎでしょうかね。
それだけ、稼げば少なくとも自分たちが生きてる間には、
資源の枯渇する言う事がはっきりと分かる事による、
世界的混乱は体験せずに済みますから、
多くの人にとってもインセンティブはあるでしょうし。